戦う前に勝つ。
日本の住宅のセキュリティーデザインの将来像。

世界一安全な国!?

 江戸時代の庶民は、壁に耳あり障子に目ありといったことわざにもあるように、当時の土や紙やを主体とした多くの住宅には鍵さえ
もかかっておらず、入ろうと思えば誰でも労無く出入りできる住まいで生活していました。近代でもこうした長年の習慣から、住宅や
建物の形状は変わっても、相変わらず防犯意識は低く、世界一安全な国と言われながら、長らく家や自転車の鍵を掛けなくても盗難が
極端に少ない、世界でも稀な生活環境であった国、日本。
しかし、近年になって空き巣やスリはもちろん、ストーカーやDVなどから殺人に至るケースが増え、ネットや凶悪犯罪の影響で連続
無差別な攻撃も増えています。

防犯の種類と傾向

 防犯は、家屋に侵入して来る犯罪者に対して予防したり、また危害を加えられそうになったときに抵抗するための用具を携帯する受
動的防犯と、地域を巡回したり、家庭を戸別訪問して犯罪の芽を摘み犯行を未然に防ぐ能動的防犯とに分けられます。
 わが国においては、長年後者が幅を利かせており、海外にも輸出された優秀な交番制度や、町内会など地域の防犯パトロールによる
効果で犯罪を未然に防ぐ面が特に発達し、したがってセキュリティーシステムの普及にしても、夜間に人が通ると点灯するセンサーラ
イトや、セキュリティー会社による侵入感知センサーや防犯カメラなど、ハイテク機器を使った予防法的なインフラは高度に発達する
反面、侵入しにくい構造の住宅や建物を作ったり、実際に攻撃された時の対処方法は長年手薄でした。
 実際、犯罪者も侵入しやすい家を選ぶし、プロほど手早く行動することから、仮にセキュリティー会社に侵入を知られても、3分後
に到着した時はもう遅いのです。また、比較的受動的防犯に気を使っている場合でも、市販のアルミ格子や防犯フィルムといった組み
合わせが多く、どれも効果が少ないばかりか日本全国同じメーカーのものを使用しているケースが多く、格子をはずすビス穴や構造は
プロでなくとも注意してみれば、簡単に脱着できるものです。また、市販フィルムも強度が不十分ながら、貼っただけで安心している
という事例が多いのです。

諸外国から学ぶもの

 ところは変わって諸外国では、元来多い犯罪発生率に加え、武器の普及によるさらなる武器の普及の連鎖による能動的というよりも、
より攻撃的防犯がみられ、また建物の構造的な面での受動的防犯が大きく発達、住宅においても日本の商業施設並みの鋼鉄製鉄格子や
防犯シャッター、 国によっては防弾ガラスの普及が8割になる地域もあります。話を現在の日本に戻すと、近年の犯罪の傾向として
は単純な窃盗犯は、平成17年から減少傾向にあるものの(警視庁調べ)年々増加する粗暴犯や凶悪犯罪が後を絶たないといわれてい
ます。物を取られるだけならまだしも、大切な命だけは狙われたくないものです。

今こそ出来ること〜受動的防犯の強化〜

 このような時代に私たちがするべきこと、それは受動的防犯の強化です。実際のお宅や事務所をご覧になってください。簡単に人が
手に届く範囲や登れる場所が格子や防犯ガラスのないサッシになっていませんか?また、格子であっても、薄いアルミや簡単にビスで
取れる構造になっていませんか?そのような場合であれば、要注意です。また、玄関や勝手口のドアが壊れやすいものや、ピッキング
しやすいものであれば、なんらかの対策が必要です。皆さんもぜひ一度身近なところの防犯度をチェックしてみてください。

機能的で美しい防犯格子

 大抵の侵入犯は、侵入するのに時間をとられるのを嫌います。実行から10分以上かかる現場に被害が少ないのは、犯行の発覚を恐れ
るためです。しかしながら、現在の日本では、この10分で侵入できる住宅がほとんどというのもまた事実なのです。具体的な対策とし
ては、セキュリティーセンサーやカメラだけに頼らないで、容易に侵入できない面格子や防犯ガラスの設置がより効果的です。従来面格
子は、牢屋を連想させたり、美しさを無視したものが一般的でしたが、格子の代わりに丸をモチーフにしたものなど、住宅の素材や質感
にあったものを紹介していくことで、皆様の防犯意識を高めるお手伝いが出来ればと考えています。

ウムデザインの防犯デザインへの取り組み

 ウムデザインでは創立以来、様々なデザイン研究・交流を行ってきました。その中でも近年、日本における防犯デザインの研究に取り
組んでいます。2003年 には、スペイン・グラナダでの数ヶ月による 鋳物ワークショップ を経て、2007年 においては南アフリカ共和国
でのセキュリティーデータ分析を行っています。そして2009年、福岡・百道浜において地域の環境にもあった、デザイン性の高い面格子
をして参ります。大切な命を守るために。